財務計画分析ダッシュボードの開発方法

12 分で読めます — by Akash Choudhary

ダッシュボードは、マネージャーが、さまざまな部門を検討しすばやく行動するために不可欠なビジネスツールです。しかしダッシュボードの作成はほぼ芸術のようなもので、すべての人がアクセスできるものではありません。しかしこれは変化しつつあります。優れたツールとデータが利用可能となったため、誰でも自分たちのダッシュボードを簡単に作成できるようになりました。

情報設計のソートリーダーであるStephen Fewは、彼の著書「Information dashboard design: the effective visual communication of data’(「邦題仮訳:情報ダッシュボードの設計:データの効果的な視覚的伝達」で、ダッシュボードについて以下のようないくつかの基準を述べています。

  • 情報の視覚的表示であるべき
  • 1つ以上の目標を1つの画面にまとめるべき
  • 一目で簡単にモニターできる

FP&Aダッシュボードとは?

FP&Aダッシュボードは、シンプルなExcel表とグラフから、専用の視覚化ソフトウェアへと進化しました。これはもはや財務数字に限らず、パイプライン、マーケティングキャンペーン、サプライチェーンのパフォーマンス、その他などのさまざまな活動の主要業績指標(KPI)を含みます。純粋な財務数字から、KPIを包含するものへの変化は、特にFP&A機能におけるダッシュボードの進化を象徴しています。

この目的を念頭に置いた上で、FP&Aプロフェッショナルは、ビジネスパートナーをサポートする、情報が豊富で役立つダッシュボードをどのように作成することができるでしょうか? 詳しく見てみましょう。

FP&Aダッシュボード開発の論理的枠組み

1.ダッシュボードの利用者を定義する

有意義でインパクトのあるダッシュボードを作成するには利用者とあなたの目的を明確に特定することから始めることが重要です。あなたはダッシュボードで何を達成しようとしているか、誰が利用するか、彼らが求める具体的情報はどのようなものか、彼らはどのように利用するかについて検討してください。これらの命題に回答することにより、あなたはダッシュボードの範囲と内容を洗練することができ、不要なデータを含まずに、関連性の高い価値あるインサイトを確実に提供できます。

売上業績ダッシュボードを作成することにより販売効率の向上をめざす場合を考えてみましょう。利用者には、営業担当者、地域マネージャー、営業ディレクターが含まれます。営業担当者は個人の業績指標とパイプライン分析を必要とし、地域マネージャーは地域の業績と収益についてのインサイトを必要とし、営業ディレクターは全体的な販売業績のハイレベルな概要を必要とします。

利用者の具体的ニーズにあわせてダッシュボードの範囲と内容を洗練していくことにより、会社は関連するインサイトを提供し、データ本位の決定と販売業績の向上をサポートすることができます。しかしこれは、あなたが計画段階からこの結果を計画した場合のみ達成可能です。そうつまり、スタートが良ければ、結果はより良くなります。

2.ダッシュボードの目的を定義する

次の重要なステップは、あなたの目標に合致しあなたの利用者の共感を呼ぶ適切な主要業績指標(KPI)と測定基準の選択です。これらのKPIと測定基準は、あなたの目標に対する進捗と結果を効果的に測定し、有意義なインサイトを提供し、情報に基づく意思決定をサポートする必要があります。以下はダッシュボードを設計する際の考察ポイントです。

  • 短期的な経営目標(今月または今四半期に焦点をあてるなど)のダッシュボードを作成するか、あるいは、予算サイクル全体についてのインサイトを提供するダッシュボードを作成するか? たとえば、ダッシュボードは売上対見込、販売割当達成度などを追跡することができます。
  • オペレーションチームのための、もしくはオペレーションKPIのダッシュボードを作成するか、それとも経営幹部と取締役のために全社的な測定基準を示そうとしているか? たとえば地域経営陣はさまざまな市場の詳細なビューを必要とするのに対し、経営幹部と取締役は毎日の収益トレンドを表示するダッシュボードにより興味を引かれるかもしれません。
  • また複数のダッシュボードを作成する場合は、同様の調整されたレイアウトを含むダッシュボードのテンプレートを作成することが役立つでしょう。次にこのテンプレートを使用して必要なダッシュボードをいくつか作成します。

ダッシュボードを設計する際、次の2つの層の情報が必要となります。

  1. 1層目のデータは事業において重要なKPIを含めます。たとえば収益トレンド、マージン、パイプラインなどです。これらは頻繁には変化しないKPIです。
  2. 2層目のデータはビジネスの焦点が変化すれば変化するKPIとします。ダッシュボードは、価格、マーケティング投資、予測の精度などさまざまなビジネス要因を含めることができます。ダッシュボードは短期的なイニシアティブに対応するための十分な柔軟性を持つ必要があり、それらの柔軟性は、当初からの適切なプランニングの結果であるべきです。

あなたの目的と対象の利用者を、全体的な事業戦略と目標に整合させるとともに、ダッシュボードがそれらを効果的にサポートするようにしなくてはなりません。

3.他の部門と協力してダッシュボードを設計する

さまざまなビジネス部門にそのKPIを追跡する能力を提供するため、FP&Aプロフェッショナルは設計段階ですべての部門と協働作業を行う必要があります。たとえば日用品(FMCG)業界においては、生産および在庫水準の予測は、製品セグメント別の売上予想に大きく依存します。

一方、製品売上の予測はまとめられ、売上予測になります。これと同時に、同じ製品売上の数字は、サプライチェーンにフローし、生産計画と在庫管理に使用されます。FP&Aプロフェッショナルは、ダッシュボードが各部門へその具体的活動にあわせたデータを提供する方法を理解する必要があります。

4.ダッシュボードを実装する

チームが設計を完了したら、ダッシュボードの実装には以下が必要となります。

1.データの整合性を確保し、データソースを1つにする。

よくあるミスは、異なるチームが、KPIに対し異なるデータソースを使用することです。たとえばFP&Aは会計システムからのデータを使用してマーケティング支出を報告し、マーケティングチームは彼ら自身のシステムを使用して、キャンペーン支出をマーケティング支出と合計したものを使用する、などの場合です。異なるチームが異なるデータソースを使用して同じKPIを報告すると、その違いは人々のダッシュボードに対する信頼を損ないます。KPIの定義とデータソースを同一にすることにより、部門はそのレポートに一貫性を持たせることができます。

2.インサイトを提供する

ダッシュボードは定量的なデータを提供します。FP&Aチームはコメントを提供し、方針修正に必要なアクションを特定することができます。FP&Aプロフェッショナルは、データポイントをリンクし、経営陣にアクションをとるよう助言し、あるいはさまざまな部門を助け目標を達成するための活動を調整します。

3.ダッシュボードを利用する

ダッシュボードは頻繁に作成され共有されますが、話し合いでは使用されません。FP&Aチームは、たとえば予測の検討などの際に、ダッシュボードを利用して会話や話し合いを推進すべきです。

4.品質管理を実施する

ダッシュボードは、チーム内であっても他者と共有する前に、品質管理プロセスを経るべきです。品質管理責任者は、チェックリストを作成し、使用することができます。これは常に進化し、データ整合性と事実のチェックを行います。

ダッシュボードの未来に影響を与える最新トレンド

FP&Aダッシュボードの進化の状況において観察されているトレンドをいくつか紹介します。

1.統合されたFP&AにおけるFP&Aチームの関与が増える

統合されたプランニングがより一般的になるにつれ、多くの部門がひとつ上のレベルのデータを提供するためにダッシュボードを構築しています。FP&Aプロフェッショナルはこのデータがどのように発行されたか把握し、データ整合性を追跡して相違を防止します。この目的はさまざまな部門と一緒に作業し、ハイレベルのダッシュボードで提示されているKPIを「ドリルダウン」したデータを組み込むことで達成できます。

2.ダッシュボードの作成に人工知能(AI)を使用する

ChatGPTおよび類似のリソースの最近の発展と関心の爆発的高まりにより、使いやすさとダッシュボード作成の速度のためにAIを使ったダッシュボードの作成はメインストリームとなるでしょう。AIはダッシュボードの作成を支援でき、あるいは基本的な記述的分析を提供できます(たとえば、予測と予算の差異を説明したり、前年対比の成長率を計算するなど)。これらは時間を節約し計算エラーの排除に役立ちます。しかしAIソースにより得られたすべてのインプットについて、事実チェックプロセスを追加することが重要です。

AIコンテンツは付加価値のために使用することができます。たとえばFP&Aプロフェッショナルは、ストーリーに文脈を提供し、自然災害がどのように特定の市場に影響を与えたかを説明したり、あるいは外的イベント(ストライキなど)が今後の売上業績にどのように影響するかを予測するインサイトを提供することができます。

3.セルフサービスダッシュボードの可用性の増加

PowerBIやTableauなどのツールを使用し、より多くの部門がダッシュボードを構築します。FP&Aはそれらや他のチームと連携し、データソースがサンドボックス化されるようにすることができます。これによりダッシュボードの作成におけるデータ差異のリスクを削減できます。ミスコミュニケーションを最小化するため、FP&Aは、KPIと用語の定義を標準化すべきです。



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