Interview No.2 - 河瀬 誠|ビジネスに必須! 戦略思考とビジュアライゼーションの重要性
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ビジネスにおいて戦略思考は必須だ。
しかし、それだけでは不十分で、その思考をわかりやすく伝えるビジュアライゼーションこそ、実は重要となってくる。
そこで戦略思考のオーソリティでもある、エムケー・アンド・アソシエイツ代表河瀬誠氏に、
改めて「戦略思考」とそれを伝える「ビジュアライゼーション」の相関関係について解説してもらった。
戦略思考はビジネスパーソンのOS
ビジネスで経営層を目指すにはもちろん、優れたビジネスパーソンとなるために欠かせないのが戦略思考です。
戦略思考とはなにか? 一言でいうと「課題を見つけて解決する」ことです。
これはすべてのビジネスパーソンにとって、土台となる思考法です。
戦略思考をコンピュータの仕組みになぞらえてわかりやすく説明したのが下の図です。
コンピュータのOSに当たる部分が、ビジネスパーソンにとっての戦略思考。
財務・マーケティング・製造・人事などの専門知識は、そのOS上で動く個別のアプリケーションです。
多くの人が専門知識を得ることが大事だと認識していますが、いくら専門知識があってもそれはアプリケーションに過ぎないということ。
土台となるOSの戦略思考がなければ、その知識を生かすことはできません。
大切なのは、「右脳=クリエイティビティ」と「左脳=ロジカルシンキング」を実際に同時に働かせて、課題解決することです。
日本では、左脳のロジカルシンキングだけを重視しがちですが、それだけでは不十分といえるでしょう。
右脳では創造力を駆使して「仮設」を組み立て、それを論理的に構造化していくのが左脳の「ロジック」です。
クリエイティブな仮設とロジックによる検証を繰り返すことで、初めてベストな課題解決が見つかります。
このような戦略思考は運動と同じで、本で知識を得ただけでは身につかないもの。
何度も実践して訓練することが必要です。
イシューツリーとMECEで課題を整理
戦略思考では、最初に立てた仮設にもとづき、
左脳のロジックをつかった「イシューツリー」を組み立てていきます。
イシューツリーとは、課題をいくつかの論点(=イシュー)でどんどん分解していくことです。
イシューツリーは課題を構造化するのに非常に優れたツールで、課題のポイントを明確化してくれます。
イシューツリーで論点を分解するときに必要なのが、
「MECE」(ミーシー:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」です。
MECEとは「ダブリなく、もれなく」という意味で、必要な要素はすべて網羅し、かつ重複しないようにすること。
ロジカルシンキングの基本概念のひとつです。
ここでポイントとなってくるのが、MECEで論点を切り分ける「軸=切り口」です。
例えば、下の図のような軸があげられます。
ジャンル/分解軸の例
ワイン/種類、産地、ブドウの種類、価格帯ほか
自動車/メーカー、車の種類、排気量ほか
銀行の個人顧客/顧客の年齢、預金高、持ち家有無ほか
このようにMECEの軸で課題を切り分けていくのが、「MECE分解」です。
課題が複雑になるほど、全体像をつかむためにMECEの軸が重要になり、整理して議論できます。
データはわかりやすくビジュアル化する
次に、ロジカルで構造化した課題を仮説検証していきます。
そこで必要なのが数字に裏付けられたデータです。それらのデータを上司やチームメンバー、
取引先などにいかに正しく理解してもらうかは、ビジネスを円滑に進めるために非常に重要です。
わかりやすいグラフや図表によるビジュアライゼーションを使いこなすことは、
戦略思考のOSにも含まれてる「コミュニケーション」のひとつとなるからです。
人は、数字をそのまま言われても頭に入ってきませんが、グラフを見ることで直感的に理解することができます。
一目瞭然でわかる、ということは、わかりやすいだけでなく、見る側の時間を効率化するというメリットもあります。
特に現代のように情報があふれている時代、資料をじっくり読みこんで理解するというのは、難しいですよね。
パッと見て理解できないグラフは、読んでもらえないと思ったほうがいい。
その点でも、ビジュアライゼーションはとても重要です。
パッと見ではなかなか比較したり、ポイントを読み取ることが難しいデータも、、、、、
そこでポイントとなるのが、どうビジュアル化するかです。
いくらグラフ化しても、数字が読み解きにくかったり、デザインがわかりにくければ伝わりません。
インフォグラフィックスが流行しているのも、一瞬のわかりやすさが求められているからです。
「C社は業界3位だが売上は順調に伸びている。1998年頃に大きな設備投資をしたと考えられる。
2年後にはB社と売上が逆転して、業界2位になる可能性も。
また、利益が少ないのは減価償却費が大きな要因と考えられ、それがなくなれば利益の急回復、
さらには自社の売上も食われ、3、4年後には業界1位に躍り出ることも十分考えられる。」
といったメッセージが読み取れる。
単純にエクセルに入力したデータをそのままグラフ化するだけでは、そのようなわかりやすさ、
さらにはそのデータに込めたメッセージをしっかり伝えるというのは、なかなか難しいでしょう。
エクセルを使いこなす「エクセル職人」になってグラフを大量生産したところで、
そのメッセージがきちんと伝わらなければ意味がないのです。
重要だけれども、面倒なビジュアライズの手間を解決
どんなグラフや図が最適か? 伝えたいメッセージが強調されるデザインとはどういうものか?
自分の中でそのイメージを持つことは重要ですが、
具体的に手を動かしてグラフや図をつくるのは正直いって時間や工数がかかる手間です。
そのため、大手コンサル会社では、資料の最終形を専門に担う部署もあるほどです。
人に伝えるのに欠かせないビジュアライゼーション。
しかし、そこに面倒さや手間があるのであれば、think-cellのようなアプリケーションを使って自動で作成することは、非常にビジネス効率を高めることに繋がりますよね。
作図にかかる工数を省略することで、より本質的な課題の整理や分析をする戦略思考に注力できるうえ、
デザイン性やわかりやすさにこだわった高いクオリティが担保できるからです。
戦略思考は、自分の付加価値を高めるスキルです。ロジックとクリエイティブ、
そしてコミュニケーションを駆使して、優秀なビジネスパーソンとしてのOSをぜひインストールしてください。
そして、その思考をわかりやすくビジュアライズ化することで、誰にでも伝えられる。
それこそが、成長し続けるビジネスパーソンの最大の武器となります。
※図版はすべて『戦略思考コンプリートブック』(河瀬誠著・日本実業出版社)を参考に作成
河瀬誠 かわせ・まこと
エムケー・アンド・アソシエイツ代表
立命館大学経営管理研究科(MBA)客員教授
東京大学工学部計数工学科卒業。
ボストン大学経営大学院理学修士および経営学修士(MBA)修了。
A.T.カーニーにて金融・通信業界のコンサルティング を担当後、ソフトバンク・グループにて新規事業開発を担当。コンサルティング会社ICMGを経て、現職。
著書に『戦略思考コンプリートブック』、『未来創造戦略ワークブック 30年後のビジネスを「妄想・構想・実装」する』(いずれも日本実業出版社)など多数。