プレゼンの達人「人を動かすプレゼンスライドのつくり方」 第2回|プレゼンスライドの考え方

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前回は、プレゼンの定義とプレゼンの主役は聞き手である、というお話をしました。
前回の内容は、今回のテーマにも密接につながっていますので、
まだご覧になっていない方は、先に前回の記事をご一読いただくことをおすすめします。


さて、今回は、プレゼン資料の役割についてお話しします。
まず、プレゼンで使う資料といえば、たとえばPowerPointでつくったスライドや、
配布用につくった紙資料などがあります。
そもそも、このような資料は必要か否か、という質問をたまにいただくことがあるので、
はじめに、この質問に対する私の考えをお伝えします。

答えは、プレゼンに資料は「必要」です。

あなたがプレゼンを聞く立場になって考えてみてください。
プレゼンを聞いているときに、その話の内容が明示されている資料を見ながら話を聞くパターンと、
まったく何も見ない状態で話を聞くパターンでは、どちらの方が理解しやすいでしょうか。

まれに、資料なしでも、トークだけで人の心をがっちり掴んでしまう名プレゼンターがいますが、
一般的には、やはり資料があった方が話を理解しやすいはずです。
プレゼンの主役は聞き手です。
その聞き手に、話を理解してもらいやすくするために、資料を使う。
そう考えていただければ、自然と「資料を使った方が良い」という結論に至ります。

次にこの記事の中では、
スクリーンやモニターに投影するための資料を「プレゼンスライド」、
配布するために紙に印刷した資料を「配布資料」と定義することにします。

なぜ、このような分け方をするかというと、
多くの方がプレゼンスライドと配布資料の役割を理解せずに使ってしまっているからです。

最も多いのが、配布用につくった情報量満載の資料をそのままスクリーンや
モニターに投影してプレゼンしてしまうケース。
心当たりがある、という方も少なくないと思います。
配布用につくった資料を、そのままスクリーンに投影してはいけません。
なぜなら、プレゼンスライドと配布資料では、その役割が異なるからです。

プレゼンスライドの役割は、「プレゼン中の聞き手の理解を促すこと」です。
プレゼンターの原稿をそのまま投影するものではありません。

重要なキーワードをスライドに散りばめることで、
プレゼンターにとっても補助的なツールとして活用することができますが、
それはメインの役割ではありません。
メインの役割は、あくまで聞き手の理解を促すことであり、
そのために分かりやすいプレゼンスライドに仕上げる必要があります。

そして、分かりやすいプレゼンスライドを作成するためには、当然デザインが欠かせません。
しかし日本では、まだまだ「デザインの重要性」が理解されていないと感じています。

私は、日々、さまざまなクライアント企業のプレゼンをコンサルさせていただいておりますが、
企業規模の大小にかかわらず、クオリティが高くないプレゼンスライドをよく見かけます。
その理由は、プレゼンスライドへの理解を「聞き手任せ」にしてしまっているからだと考えています。

「多少デザインが良くなくても、スライドに書いてある文章を読めば分かるよね、分かってくれるよね」
という考えにより、文章量が多め、デザインはおざなり、というスライドになってしまうのです。
つまり、デザインはあくまで飾りのようなもの、として捉えてしまっているのでしょう。

たしかに、過去には、デザインが多少良くなくても、中身さえ良ければ問題ない、
という時代があったかも知れません。

そのような時代では、デザインよりも、中身を磨くことが重要視されていました。
しかし、現代においては、その考え方は通用しません。
現代は、中身が良いのは当然で、デザインでも差がつく、という時代なのです。

私は、デザインのことを「本質(中身)の外側」と捉えています。
たとえ外側であっても、本質の一部に違いない、という考え方です。
なぜなら、どれだけ本質が良かったとしても、デザインが悪ければ、
本質がきちんと聞き手に伝わることはないからです。

聞き手に伝わらないのであれば、その本質は存在しないのと変わりません。
ですので、デザインは、本質と同様に重要な要素なのです。

それでは、プレゼンスライドのデザインはどのような状態を目指せばよいかというと、
ずばり、「シンプル」です。

文字量をなるべく減らし、データを分かりやすく表現する(データビジュアライゼーション)ことで、
シンプルなスライドデザインを目指しましょう。

ただし、スライドをシンプルにすると
「聞き手にちゃんと伝わらないのではないか」
という不安を感じる方がいるかも知れません。

そんなときに役立つのが「配布資料」です。

配布資料の役割は、「聞き手の復習ツール」です。
プレゼンスライドでは伝えきれなかったような詳細な情報を含め、
すべての情報をこの配布資料に記載しましょう。
そして、プレゼンが終わった際に聞き手に配ることで、あなたが伝えたい情報を
きちっと聞き手の手元に届けることができます。

大切なのは、「プレゼンスライド」と「配布資料」を使い分けること。
役割によって使い分けて、ぜひ効果的なプレゼンを行ってください。


【著者】

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髙橋 惠一郎
(たかはし けいいちろう)

PRESENTATION PLANNING
プレゼンテーション・プロデューサー
ビジネス系YouTuber
ザ・プレゼン大学

2003年に早稲田大学教育学部理学科を卒業後、日立製作所に入社。
官公庁をクライアントとしたシステム営業に従事する。
その後、金融機関での営業企画や教育系ベンチャーでの新規事業企画を経て、
2014年にプレゼンのデザインを手掛けるスタートアップにコアメンバーとして参画。
同業界においては異例の「人材育成事業」を立ち上げ、事業責任者として戦略立案および推進を行う。

2016年、プレゼンテーション・プロデューサーとして独立。
プレゼンのコンセプト設計・シナリオ構築や資料デザイン、伝達技術まで、
プレゼンに関するトータルなコンサルティングを手掛ける。
これまでに、年商数億円から数兆円規模の大企業、中小企業において、
新社会人から経営者クラスまで幅広い層を対象とした指導実績がある。
自身の、様々な成功&失敗体験を通じて構築した、表面的でない本質的なプレゼンメソッドが売り。

2019年よりYouTubeチャンネル「ザ・プレゼン大学」を運営。
書籍に『いちばんやさしい資料作成&プレゼンの教本』(インプレス)、
『PowerPointの神ワザ見るだけノート』(宝島社)。

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