プレゼンの達人「人を動かすプレゼンスライドのつくり方」 第1回|プレゼンにおいて大切なこと
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あなたにとって、プレゼンとは何ですか?
あなたにとって、プレゼンとは、何ですか?
「人前で話すこと」でしょうか。
それとも、「考えを伝えること」でしょうか。
たとえば、営業パーソンがお客さまに商品を説明するシーンを思い浮かべて
ください。テーブルにPCや資料を広げて、買って欲しい商品の良さを一生懸命
アピールする。これはまさに、プレゼンの代表的な一例でしょう。
また、社外に出る機会がない内勤のビジネスパーソンでも、会議や打ち合わせで、
自分の意見を発言する、という機会がある方は多いと思います。
私は、これも立派なプレゼンであると考えています。
言葉の定義は人それぞれですので、先の質問の正解は1つではありませんが、
私はプレゼンを「自分の考えを伝えて、聞き手に変化を求める行為」と定義しています。
営業中のプレゼンについていえば、商品やサービスを紹介することによって、
お客さまに「商品を買う」という変化を求めていることになりますし、
また、会議や打ち合わせ中のプレゼンについていえば、自分の意見を投じる
ことによって、「メンバーの合意」や「プレジェクトの進捗」という変化を
求めているといえます。
つまり、上記2つの例は、いずれも
「自分の考えを伝えて、聞き手に変化を求める行為」
という定義に当てはまっています。
プレゼンの本質
しかし、私はこれまでに様々なプレゼンを拝見してきましたが、
「自分の考えを伝える」ことはできても、
「聞き手を変化させる」ことができないプレゼンが非常に多いのが実態です。
その理由は、「プレゼンの本質」ともいえる、とても大切な1つの考え方が欠如しているからです。
たとえば、あなたがある商品をプレゼンされたとします。
そして、その商品を買おうと決断するのは、どのような場合でしょうか。
もしその商品が、自分に関係がない、無駄な浪費になってしまう、
と考える場合は、もちろん購入に至らないでしょう。
しかし、その逆で、自分に価値がある、メリットがあると考えれば、「買ってみよう」という決断になるはずです。
つまり、人を動かすプレゼンには、「聞き手が主役」という考え方が欠かせません。
聞き手を主役として捉えて、そのプレゼンの中で、どれだけ「聞き手にとっての価値」
を伝えることができるか、ここが勝負になります。
そんな中、多くのプレゼンでは、「プレゼンターが主役」になってしまいがちです。
プレゼンター側の都合で、プレゼンの内容が決められてしまったり、
発表方法も一方的なものになってしまったりします。
だから、「自分の考えを伝える」ことはできても、なかなか「聞き手を変化させる」ことができないのです。
「価値を伝える」方法
ここまでの話で、プレゼンにおいては
「聞き手を主役として捉えて、その聞き手にとっての価値を伝えることが大切」
という考え方はご理解いただけたと思います。
ただ、「価値を伝える」という表現自体、とても抽象的なので、
ここからは「価値を伝える」方法を具体的にご説明します。
たとえば、今あなたは、新しい筆記具の購入のために、文房具店を訪れているとします。
そして、そのお店のスタッフがこのようにプレゼンしました。
「この新製品は、4色のボールペンとシャープペンシルを兼ね備えた筆記具です。 ボールペンの先端の『スムーズボール』を改良することで、従来品に比べて紙との摩擦率を 50%軽減いたしました。更に、ペンの中心に新機能『バランサー』を搭載し、常に最適な重量感を得ることが可能となりました」
この説明を聞いて、あなたは購入を決断できますか?
これはよくありがちなプレゼンで、私は「情報の羅列プレゼン」と呼んでいます。
商品の「機能」を列挙しているだけで、聞き手にとっての「価値」がまったく伝わってきません。
このような情報を羅列するだけのプレゼンでは、人の心を動かすことはできません。
では次に、このようなプレゼンだったらどうでしょうか。
「この新製品は、4色のボールペンとシャープペンシルを兼ね備えており、 これ一本あれば他の筆記具は必要ありません。筆箱を持ち運ぶ必要がなくなり、 かばんの嵩張りを防げます。 更に、ペンの中心にバランス機能を搭載し、何時間握っていても疲れません。 これまでにない快適なビジネスシーンをお約束します。」
この説明であれば、あなたがこの筆記具を購入する可能性がグッと高まるのではないでしょうか。
なぜなら、このプレゼンからは、「かばんの嵩張りを防ぐ」ことができたり、
「何時間握っても疲れない」という、あなた自身に対する価値が伝わってくるからです。
これが「価値を伝える」ということです。
多くのプレゼンターが「機能」の説明に始終する中、
「価値」が伝わるプレゼンを習得することができれば、
それだけであなたのプレゼン力は飛躍的にレベルアップします。
「人を動かしたければ、その相手にとっての価値を伝えなければならない」
プレゼンをつくるときは、この一点だけは、忘れないようにしてください。
【著者】
2003年に早稲田大学教育学部理学科を卒業後、日立製作所に入社。
官公庁をクライアントとしたシステム営業に従事する。
その後、金融機関での営業企画や教育系ベンチャーでの新規事業企画を経て、
2014年にプレゼンのデザインを手掛けるスタートアップにコアメンバーとして参画。
同業界においては異例の「人材育成事業」を立ち上げ、事業責任者として戦略立案および推進を行う。
2016年、プレゼンテーション・プロデューサーとして独立。
プレゼンのコンセプト設計・シナリオ構築や資料デザイン、伝達技術まで、
プレゼンに関するトータルなコンサルティングを手掛ける。
これまでに、年商数億円から数兆円規模の大企業、中小企業において、
新社会人から経営者クラスまで幅広い層を対象とした指導実績がある。
自身の、様々な成功&失敗体験を通じて構築した、表面的でない本質的なプレゼンメソッドが売り。
2019年よりYouTubeチャンネル「ザ・プレゼン大学」を運営。
書籍に『いちばんやさしい資料作成&プレゼンの教本』(インプレス)、
『PowerPointの神ワザ見るだけノート』(宝島社)。